国際私法関係の法律・条約・資料
■ 遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約(昭和39年6月10日−条約第9号)
− 目 次 −
第 1条 第 5条第 9条 第13条第 17条
第 2条 第 6条 第10条 第14条第 18条
第 3条 第 7条 第11条 第15条第 19条
第 4条 第 8条 第12条第16条第 20条


この条約の署名国は、
遺言の方式に関する法律の抵触を解決する共通の規則を定めることを希望して、
そのため条約を締結することに決定し、次の諸条を協定した。

第1条
遺言は、その方式が次に掲げるいずれかの地又は国の国内法に適合するときは、方式に関し有効とする。
(a) 遺言者が遺言をした地
(b) 遺言者が、遺言をした時又は死亡の時に、国籍を有した国
(c) 遺言者が、遺言をした時又は死亡の時に、住所を有した地
(d) 遺言者が、遺言をした時又は死亡の時に、常居所を有した地
(e) 不動産について、その所在地
この条約の適用上、遺言者の本国の法制が不統一のものである場合には、その法制において行なわれている規則によつて準拠法を決定するものとし、そのような規則がないときは、その法制に属する法律のうち遺言者が最も密接な関係を有した法律を準拠法とする。 遺言者が特定の地に住所を有したかどうかの問題は、その地の法律によつて規律される。

第2条
第1条の規定は、前の遺言を取り消す遺言に適用する。
前項の取消しは、その方式が、取り消される遺言を第1条の規定により有効とする法律のいずれかに適合するときも、方式に関し有効とする。

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第3条
この条約は、締約国の現在又は将来の規則で前2条に規定されていない法律の方式に従つてした遺言を有効と認めるものを害するものではない。

第4条
この条約は、二人以上の者が同一の証書でした遺言の方式についても、適用する。

第5条
この条約の適用上、許容される遺言の方式を遺言者の年齢、国籍その他の人的資格によつて制限する定めは、方式の範囲に属するものとする。遺言が有効であるために必要とされる証人が有すべき資格についても、同様とする。

第6条
この条約に定める抵触規則の適用は、いかなる相互主議の条件にも服さないものとする。この条約は、関係者の国籍又は前諸条による準拠法が締約国の国籍又は法律でない場合においても、適用する。

第7条
この条約によつて準拠法とされた法律の適用は、明らかに公の秩序に反する場合を除くほか、排除することができない。

第8条
この条約は、遺言者がこの条約の効力発生の後に死亡したすべての場合について、適用する。

第9条
各締約国は、第1条第3項の規定の適用を排除して、遺言者が住所を有した地を法廷地法に従つて決定する権利を留保することができる。

第10条
各締約国は、他の国籍を有しない自国民が口頭の方式によつてした遺言(特別の状況の下でしたものを除く。)を有効と認めない権利を留保することができる。

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第11条
各締約国は、次の諸条件が満たされる場合には、外国で特定の方式によつてした遺言を当該方式についての自国の法律の規定に基づいて有効と認めない権利を留保することができる。
(a) 遺言が、遺言者が遺言をした地の法律であるということを唯一の理由として準拠法とされる法律に従つてのみ方式に関し有効であること。
(b) 遺言者が、留保を行なつた国の国籍を有したこと。
(c) 遺言者が、留保を行なつた国に住所又は常居所を有したこと。
(d) 遺言者が、遺言をした国以外の国で死亡したこと。
この留保は、留保を行なつた国に所在する財産についてのみ効力を有する。
第12条
各締約国は、自国の法律の下で相続に関しないものとされる遺言条項についてこの条約を適用しない権利を留保することができる。

第13条
各締約国は、第8条の規定の適用を排除して、この条約をその効力発生の後にされた遺言についてのみ適用する権利を留保することができる。

第14条
この条約は、ヘーグ国際私法会議の第9回会議に代表者を派遣した国による署名のため開放される。
この条約は、批准されなければならず、批准書は、オランダ外務省に寄託するものとする。

第15条
この条約は、第14条第2項に規定する批准書で三番目に寄託されるものの寄託の日の後60日目の日に効力を生ずる。 この条約は、その後に批准する各署名国については、その批准書の寄託の日の後60日目の日に効力を生ずる。

第16条
ヘーグ国際私法会議の第9回会議に代表者を派遣しなかつたいずれの国も、この条約が第15条第1項の規定に従つて効力を生じた後、この条約に加入することができる。加入書は、オランダ外務省に寄託するものとする。
この条約は、これに加入する国については、その加入書の寄託の日の後60日目の日に効力を生ずる。

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第17条
いずれの国も、署名、批准又は加入の時に、自国が国際関係について責任を有する領域の全部又は一部にこの条約を適用する旨を宣言することができる。この宣言は、この条約がその国について効力を生ずる時に効力を生ずる。
その後は、この種のいずれの適用も、オランダ外務省に通告するものとする。
この条約は、前項の通告の日の後60日目の日に、それが適用されることとなる領域について効力を生ずる。

第18条
いずれの国も、批准又は加入の時までに、第9条、第10条、第11条、第12条及び第13条に規定する留保のうち一又は二以上の留保を行なうことができる。その他のいかなる留保も、認められない。
各締約国は、第17条の規定に従つてこの条約の適用を通告する時に、それが適用されることとなる領域の全部又は一部について前記の留保のうち一又は二以上の留保を行なうことができる。
各締約国は、いつでも、自国が行なつた留保を撤回することができる。撤回は、オランダ外務省に通告するものとする。 留保は、前項の通告の日の後60日目の日に効力を失う。

第19条
この条約は、第15条第1項の規定に従つて効力を生じた日から5年間効力を有する。前記の日の後に批准し又は加入した国についても、同様とする。

この条約は、廃棄されない限り、5年ごとに黙示的に更新される。
廃棄は、5年の期間が満了する少なくとも六箇月前にオランダ外務省に通告しなければならない。
廃棄は、この条約が適用される特定の領域に限定して行なうことができる。
廃棄は、それを通告した国についてのみ効力を生ずる。この条約は、その他の締約国について引き続き効力を有する。

第20条
オランダ外務省は、第14条に規定する国及び第16条の規定に従つて加入した国に対し、次の事項を通告するものとする。
(a) 第14条に規定する署名及び批准
(b) 第15条第1項の規定に従つてこの条約が効力を生ずる日
(c) 第16条に規定する加入及びそれが効力を生ずる日
(d) 第17条に規定する適用及びそれが効力を生ずる日
(e) 第18条に規定する留保及びその撤回
(f) 第19条第三項に規定する廃棄

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以上の証拠として、下名は、正当に委任を受け、この条約に署名した。
1961年10月5日にヘーグで、フランス語及び英語により本書一通を作成した。フランス語の本文と英語の本文との間に相違がある場合には、フランス語の本文によるものとする。本書は、オランダ政府の記録に寄託するものとし、その認証謄本は、外交上の経路を通じ、ヘーグ国際私法会議の第9回会議に代表者を派遣した国に送付するものとする。

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