この条約の署名国は、
子に対する扶養義務の準拠法に関する共通の規則を定めることを希望し、
このため条約を締結することに決定して、次のとおり協定した。
第1条
子が扶養を請求することができるかどうか、どの程度まで請求することができるか及び誰に対して請求することができるかは、子の常居所地の法律によつて定める。
子の常居所に変更がある場合には、その変更の時から新たな常居所地の法律を適用する。
扶養の請求を申し立てることができる者及びその申立てをすることができる期間についても、子の常居所地の法律によつて定める。
この条約の適用上、「子」とは、嫡出である子、嫡出でない子又は養子であつて、婚姻をしていない二十一歳未満のものをいう。
第2条
前条の規定にかかわらず、各締約国は、次のすべての条件が満たされる場合に自国の法律を適用することを宣言することができる。
(a) 扶養の請求が自国の当局に申し立てられること。
(b) 子及び扶養を請求される者が自国の国籍を有すること。
(c) 扶養を請求される者が自国に常居所を有すること。
第3条
前二条の規定にかかわらず、子の常居所地の法律が当該子に対しいかなる扶養を受ける権利をも認めない場合には、事件の係属する当局の属する国の抵触規則によつて指定される法律を適用する。
第4条
この条約によつて準拠法とされた法律の適用は、事件の係属する当局の属する国の公の秩序に明らかに反する場合を除くほか、排除することができない。
第5条
この条約は、傍系親族間の扶養については適用しない。
この条約は、扶養義務に関する法律の抵触についてのみ規律する。この条約を適用して行われた決定は、扶養義務者と扶養権利者との間の親子関係又は親族関係の確定に影響を及ぼすものではない。
第6条
この条約は、第一条の規定によつて指定される法律が締約国の法律である場合にのみ適用する。
第7条
この条約は、ヘーグ国際私法会議の第八回会期に代表を出した国による署名のために開放しておく。
この条約は、批准されなければならない。批准書は、オランダ外務省に寄託する。
各批准書の寄託について調書を作成するものとし、その認証謄本は、外交上の経路を通じて各署名国に送付する。
第8条
この条約は、前条第二項の批准書のうち四番目に寄託されるものの寄託の時から六十日目の日に効力を生ずる。
この条約は、その後に批准する各署名国については、その批准書の寄託の日から六十日目の日に効力を生ずる。
第9条
この条約は、締約国の本土地域については当然に適用する。
締約国は、自国が国際関係について責任を有する他の領域の全部又は一部につきこの条約を適用することを希望する場合には、その旨を文書によつて通告するものとし、その文書をオランダ外務省に寄託する。同外務省は、その文書の認証謄本を外交上の経路を通じて各締約国に送付する。
この条約は、前項の送付の後六箇月以内に異議を申し立てなかつた国と同項の通告を行つた国が国際関係について責任を有する領域であつてその通告の対象となつたものとの間で、効力を生ずる。
第10条
国際私法会議の第八回会期に代表を出さなかつた国は、この条約に加入することができる。ただし、この条約を批准した国がオランダ政府による加入の通知の後六箇月以内に異議を申し立てないことを条件とする。加入は、第七条第二項に定める方法に準じて行う。
この条約は、第八条第一項の規定に従つて効力を生じた後でなければ、これに加入することができない。
第11条
各締約国は、この条約の署名若しくは批准又はこれへの加入に際して留保を行うことにより、養子についてはこの条約を適用しないことができる。
第12条
この条約は、第八条第一項に規定する日から五年間効力を有する。
前項の有効期間は、第八条第一項に規定する日以後にこの条約を批准し又はこれに加入する国についても、同様とする。
この条約は、廃棄されない限り、五年ごとに黙示的に更新される。
廃棄は、五年の期間が満了する少なくとも六箇月前にオランダ外務省に通告するものとし、同外務省は、これを他のすべての締約国に通知する。
廃棄は、第九条第二項の規定に従つて行われる通告に明示する領域の全部又は一部に限定して行うことができる。
廃棄は、これを通告した国についてのみ効力を生ずるものとし、その他の締約国については、この条約は、引き続き効力を有する。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。
千九百五十六年十月二十四日にヘーグで本書一通を作成した。本書は、オランダ政府に寄託するものとし、その認証謄本は、外交上の経路を通じて、ヘーグ国際私法会議の第八回会期に代表を出した国及び後に加入する国に送付する。
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